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呼ばれもの 其の2

急須

急須の絵

呼ばれたところ 西新岩田屋 陶器売場
身請け金 2,500円
大きなサイズのイラスト


 急須を買うときとは、いつか。

 割れたときか、家族の数が変わって大きさが不具合になったとき。それに、客用に湯飲みと揃いで買うときくらい。一度買ったら平気で5年10年つきあってしまうから、それなりに吟味しておきたいモノ。

 でも、要るときになって探してみたら、どこに行っても面白いくらい似たよーなものしかないのでびっくりした。「茶漉しがついてる」「洗いやすそう」「使いやすそう」で、まあ許せるかという見た目の妥協ラインに乗ったものがやたらと多い。完全な日常道具だからって、ここまで「売れ線」か高い「産地もの」「作家もの」しか見つからない食器もない。

 急須が割れて、あってもいいなと思っていたちょっと大きめサイズを妥協ラインで見つけたあと、まいにち使う分は呼ばれるのを待つことにした。

 3ヶ月くらいして呼ばれたところはデパート。
 ふつう並んでる商品とは別に、バーゲンのときには卸しやさんが廃番ものや不揃いものをごそっと持ってきたりする、その中にあった。

 急須には珍しい形に目がとまった。模様は見たところぜんぶ手で丁寧に描きこんである。値札とは別の貼り札に、急須に入ってる銘と違う店名、それに「ポット」「5000円」。そのコーナーに並んでいたのはほとんど1点ものだったから、たぶん卸し屋さんの展示品を持ってきたのだろう。
 値札は2,500円になっていた。少し小ぶりなのが気になるけど、たっぷりいれればちょうど2杯分くらいはある。呉須の色もいいし、うちの赤い卓袱台によく似合いそうだ。

 揃いの小さな蓋ものといっしょに買うことにした。急須の取手と注ぎ口がなくて、ぎゅっと上から寸詰まりにしたくらい。すぐ使うあてはないけど、今買っておかないとたぶん二度と手に入らない。「展示品の処分」が当たっていれば、廃番でなくてもその卸し屋は取り扱いをやめているということだ。呼ばれたら買え。

 ところで、この蓋ものの貼り札には「シュガー」と書いてあった。急須は「ポット」。紅茶に使ってほしかったか、でも使わないよと思いながらシュガーには生姜漬を入れている。